賃貸住宅を退居するときに、問題になるのが敷金精算書が届いて納得のいく内容かわかりにくいこともあり、支払わなければいけないのか疑問に思うこともあります。
敷金精算書が届いたら、どのような判断をすればよいのか、まとめてみました。
この記事の目次
敷金精算書が届いたらどうする?
「返す敷金はないと言われた」「30万円の敷金のうち3万円しか返ってこない」
「100万円のリフォーム費用を請求された」など、
賃貸住宅を退居するときの原状回復費用・敷金精算をめぐるトラブルの相談が多くあります。
納得できない多額の修復費用を貸主側から請求されたとしても、この時点で、借主には請求された金額の支払い義務はないので、心配する必要はありません。
請求額・精算額はあくまでも貸主側の主張に過ぎません。
負担すべき工事費用を自分で算定する
請求書・精算書が届いたら、請求の工事項目について吟味します。
請求内容に於いて、自分が負担するべき必要な項目か、負担する必要がないと思う項目に分けます。
負担が必要な項目については、負担金額を算定して自分で計算した負担金額を 相手方に通知します(借主の主張)。
貸主・借主それぞれの主張がそろったところで、話し合いをして精算金額を決めます。
話し合いで決められないときは、裁判等(少額訴訟や民事調停など)で決着することになります。
「原状回復ガイドライン」を参考に算定する
自分の負担が必要か否かの判断、負担額の算定には、何らかの根拠が必要になります。
国土交通省は、原状回復の費用負担のあり方等についてガイドラインを示しています(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」平成11年8月再改定)。
この「原状回復ガイドライン」は、現時点において妥当と思われる一般的な基準を示したものです。
この基準を参考にして、自分の負担が必要となる原状回復費用を算定しましょう。
借主の原状回復義務の範囲について
契約が終了すると、借主には借りていた部屋を原状に回復して明け渡す義務があります。
借主の不注意等により、落ちない汚れを付着(汚損)させたり、設備等を壊したとき(毀損)には修復義務があります。
また、設置した棚やエアコン等は撤去する義務があります。
言葉どおりの原状回復義務です。
しかし、損耗や汚損(価値の減少)は、
「借主が借りていた部屋を、契約に定められた方法に従い、かつ、社会通念上通常の使用方法により使用していればそうなったであろう状態であば、使用開始時の状態より悪くなっていたとしても、そのまま貸主に返還すればよい」とするのが裁判所の考え方です。
「原状回復ガイドライン」もこの考え方に準じて基準を示しています。
自然劣化・損耗等は借主に負担義務は
「原状回復ガイドライン」が示しているのは、
①日焼け等の自然的な劣化・損耗等(自然損耗)、家具の設置跡等の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)は賃料に含まれており、借主に負担義務はない。
②借主に負担義務がある場合の内装・設備等の補修費用等は、経過年数を考慮して、年数が多いほど借主の負担割合を減少させる。
③クロス等は1㎡単位、畳等は1枚単位等、補修工事が最低限可能な施工単位が、借主の負担対象範囲となる―という考え方です。
また、借主に特別な負担を課す特約の要件について、最高裁の判断と考え方を示しています。